暴力シゴキのDNA

それは暴力で他人を教化し、自分の理想とする地点に到達させることが出来る、という幻想だ。 その幻想が共同幻想としてこの国の天空を覆い、ちっぽけな自分の勝手な怒りの発散行為を正当化している。
野間宏の「真空地帯」を引合いに出すまでもなく、陸軍内務班は日本人の世界に恥ずべき低劣な部分が作り上げた世界である。 あるブログに「軍隊は、日本の男性の俗悪と卑小をパッケージしたようなところである」と体験記があるが、まったくそのとおり。 これほど陰湿・低劣な現象はほかの国では一般化していない。
早い話いま徴兵制が復活し、誰でも彼でも軍隊に放り込まれる、という事態になったとき、必ず正確に7,80年前のあのおぞましい「内務班」がそっくり再現されることだろう。
ここ100年か200年の間に、日本人のDNAにこれが組込まれてしまったのだ。
日本は山間部が多くて居住面積が狭い上に、視界を山並がさえぎり空がせまいため、精神的に人との距離が少ない。 そこで他人との比較意識が発達し、劣等感・優越感に敏感になる。
軍隊のように、身分や階級序列がリセットされるところでは、いままで低層社会にいた(と感じていた)人たちが息を吹きかえし、これまでの恨みを晴すことになる。
そのとき錦の御旗になる金科玉条は「教育のための鉄拳」であり、「情けのゲンコツ」だった。

  • 同じようなことが年少者や下級生を「指導」する権限を得たときに、血液の奥深くひそむDNAによって引き起される
  • 教室内の「教育的」暴力や罵倒、家庭内の「しつけ」の暴力なども同じDNAが根にある

これら恥ずべきDNAが日本人の血から消え去るのは、100年かかるか200年かかるか。 日本人に真の人権意識が自然にそなわるのと同じ時間がかかるだろう。 今回の優勝旗返還騒動がそのターニングポイントになる好機かもしれない。